「ロレックス投資」や「腕時計投資」という言葉がメディアで取り上げられるようになり、所有している時計やこれから購入を考えている時計の資産価値が気になった人も多いのではないでしょうか?
本記事では、グランドセイコーの資産価値や注意点、価格が高騰しているモデル等についてご紹介します。
腕時計の資産価値とは
そもそも資産価値とは、一般に財産としての評価額や市場での取引価格のことです。
取引価格は、売り手と買い手との需要と供給で決まります。
そのため、買いたいと考える人がいなければ価値はゼロになりますし、ROLEXの腕時計のように販売店に通い詰めてでも手に入れたいと考える人が多ければ価格は上昇します。
そのため「ロレックス投資」と言って、値上がりしそうなモデルを購入して、値上がり後に売却して差額分の利益を得ようとする人々も少なくないようです。
ロレックス投資とまではいかなくても、もし手放すことになった場合に購入価格と同等程度もしくはそれを上回る価格で売却できる可能性が高いことは、安心感につながりますよね。
グランドセイコーの資産価値
グランドセイコーもロレックスのように売却価格が購入価格を上回ることはあるのでしょうか?
答えはNOです。
残念ながらグランドセイコーは購入時の価格よりも値上がりすることは少なくとも2022年時点ではないようです。
※一部の例外モデルについては後述します。
そのため、値上がりしそうなモデルを購入し、値上がり後に売却して差額分の利益を得るというようなことは出来ないと考えた方が良いでしょう。
値上がり益だけを考えるともっと効率のいい資産は他にたくさんあります。
では、中古のグランドセイコーは1円の価値もないのでしょうか?
答えはNOです。
購入価格を上回ることこそありませんが、グランドセイコーはリセールバリュー(=定価に対する買取価格の割合)が比較的高いです。
通常、腕時計の中古買取価格は定価の10分の1前後ぐらいが相場ですが、グランドセイコーの人気モデルの場合は定価の50%ほどで買い取ってもらえる場合もあります。
以上の話をまとめると、
グランドセイコーの時計は、資産価値についてはロレックスには現状敵わないが、その他の多くの時計ブランドに比べると優位性がある、ということがお分かりいただけるかと思います。
グランドセイコーのリセールバリュー
グランドセイコーのリセールバリューについてもう少し具体的に考えてみます。
グランドセイコーSBGX261(定価¥253,000)とSEIKOプレザージュSARX035(定価¥110,000)について、購入後5年後に売却するケースを比較してみましょう。
・グランドセイコーSBGX261
クォーツ式のエントリーモデルでありながらグランドセイコーの魅力を最大限に楽しめるとして人気のモデルです。
新品価格は253,000円です。
グランドセイコーSBGX261について、普段使い程度の使用感がある場合の買取り額は60,000円でした。
メルカリでは中古で13~17万円で取引されていました。
・プレザージュSARX035
SEIKOプレザージュSARX035は、手の届きやすい価格でありながら高級感のある外観と長く使える機械式であることから、コスパに優れていると大変人気の高いモデルです。
裏側はスケルトン仕様になっており、ムーブメントの動きを眺めることができます。
新品価格は110,000円です
SEIKOプレザージュSARX035について、普段使い程度の使用感がある場合の買取り額は60,000円でした。
また、メルカリでは中古品が52,000~70,000円で取引されていました。
SARX035は廃盤で新品が店頭で手に入らないため、中古価格がやや上昇傾向にあるようです。
以上を踏まえると、
25万円のグランドセイコーを5年間使い、その後メルカリで14万円の売却益を得たと仮定すると
「25万円の時計を、実質11万円で5年間使った」ことになります。
25万円の時計は高くて手が出ないという方でも、実質11万円となれば購入のハードルはかなり下がりますね。
一方、11万円のプレザージュを5年間使い、メルカリで6万円の売却益を得た場合はどうでしょうか。
「11万円の時計を、実質5万円で5年間使った」ことになりますね。
単純な下落額はグランドセイコーの方が大きいですが、実質的な支払額が6万円の差であれば、高級時計であるグランドセイコーを使ってみたいという人は少なくないでしょう。
国産最高峰の腕時計として認知度の高いグランドセイコーを身に着けられるわけですから、ステータス性も満足度も高いですね。
時計好きの方と会話が弾んでビジネスにもプラスに働くかもしれません。
プレザージュも同じくSEIKOのブランドで、性能面でグランドセイコーに劣るといったことはありませんが、これらの "精神的メリット" は、プレザージュの時計を身に着けた場合よりもグランドセイコーの方がより大きいと考えられます。
また、グランドセイコーは2021年10月から新しいアフターサービスプログラムが開始され、これによって保証期間が従来の3年から5年に延長されました。一方のプレザージュは保証期間が1年間です。
もちろん人それぞれ価値観は異なりますが、精神的な満足度やアフターケアなどを考慮すれば25万円の時計を買ったほうが大きなリターンが得られたという結論に至る人も少なくないはずです。
また、本ケースではプレザージュが廃盤の人気モデルだったため中古価格が高騰していましたが、一般的には高級ブランドの方が資産価値が下がりにくいです。
金額の大きい買い物をする際は、このようにリセールバリューも考慮してみましょう。
資産価値を高く保つためのポイント
時計の資産価値を少しでも高く保つためには時計をなるべく劣化させない(良い状態に保つ)ことが非常に重要です。
良い状態を保つために心掛けるべきポイントをご紹介します。
① こまめに皮脂汚れや水気を拭き取る
② スマホやPCと一緒に保管しない
③ 定期的にオーバーホールを行う
④ 定期的に動かす(機械式のみ)
① こまめに皮脂汚れや水気を拭き取る
腕時計は直接肌に身に付けるものです。そのため、ベルトなどの隙間に汚れが溜まり、放っておくとサビてしまう事があります。
そこで、使用後に柔らかい布で汚れをふき取ることを習慣づけましょう。
きめの粗い布で拭くと傷がつく恐れがあるので天然皮革の「セーム革」やマイクロファイバーを使用しましょう。
② スマホやPCと一緒に保管しない
腕時計は精密機器です。磁気の影響を受けると故障の原因になるため、家電製品やパソコン、スマホから15センチ以上離して保管してください。
③ 定期的にオーバーホールを行う
機械式やスプリングドライブはもちろんのこと、クオーツ式であっても、約5年に一度、オーバーホール(分解清掃)を行いましょう。
④ 定期的に動かす(機械式のみ)
機械式時計のみになりますが長期間着用せずに放置していると、ムーブメント内部の潤滑油が凝固しギヤ等に悪影響を及ぼす恐れがあります。
そのため、毎日身に着けることが出来ない場合は「ワインディングマシーン」という、時計を自動で動かしてくれる機械に入れて時計を動かしておくことで故障を防ぐことが出来ます。
高価買取モデル
グランドセイコーは購入時の価格よりも値上がりすることはないと述べましたが、厳密には一部例外があります。
それは「数量限定モデル」です。数量限定モデルがすべて値上がりするとは限りませんが、供給が少ない分プレミア化しやすい傾向にあります。
実際にどのモデルが値上がりしているのかいくつかご紹介します。
SBGC219(2017年発売)
・スプリングドライブ クロノグラフ GMT誕生10周年記念モデル
・ダイヤルカラーは数量限定モデルのみに採用される「グランドセイコー・ブルー」
・世界限定500本
引用元:プレスリリース
発売時の定価1,650,000円(税抜き)に対し、中古市場では139~158万円で販売されているようです。
品番 | SBGC219 |
発売 | 2017年5月 |
駆動方式 | スプリングドライブ(最大約72時間持続) |
ムーブメント | 9R96 |
素材 | セラミックス、ブライトチタン |
精度 | 平均月差±10秒 |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧) |
ケースサイズ | [外径] 46.4㎜[厚さ] 16.2㎜ |
定価 | 1,650,000 円(税込) |
SBGH267(2018年発売)
・キャリバー9S誕生20周年を記念モデル
・世界限定1500本
引用元:プレスリリース
発売時の価格は650,000円(税抜き)で、中古市場では120~142万円と販売価格を上回る価格で販売されているようです。
品番 | SBGA211 |
発売 | 2018年3月 |
駆動方式 | 機械式(自動巻き) |
ムーブメント | 9S85 |
ケースサイズ | [外径]39.5㎜[厚さ]13.0㎜ |
精度 | 平均日差+5秒~‒3秒 |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧防水) |
定価 | 650,000円+税 |
グランドセイコー50周年記念限定モデル(2010年発売)
・50周年を記念する18Kイエローゴールドの獅子の意匠をダイヤルに配した限定モデル
・スプリングドライブ、クォーツ、機械式の各駆動方式のモデルが作られた
引用元:プレスリリース
SBGA055(スプリングドライブモデル)
発売時の定価は577,500円でしたが、中古市場での販売価格は108万円と高騰しています。約2倍近い価格上昇ですね。
品番 | SBGA055 |
駆動方式 | スプリングドライブ |
ムーブメント | 9R15 |
ケースサイズ | 〔ケース外径〕 41.0mm 〔厚さ〕 12.5mm |
精度 | 平均月差±10秒(日差±0.5秒相当) |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧防水) |
発売日 | 2010年5月25日 限定300本 |
SBGX075(クオーツモデル)
・特別に選別した水晶振動子の搭載により年差±5秒という超高精度を実現
・ダイヤル6時位置には年差±5秒の高精度を象徴する「ファイブ・ポインテッド・スター」
発売時の定価は315,000円でしたが、中古市場での販売価格は48~53万円のようです。
品番 | SBGX075 |
駆動方式 | クォーツ式 |
ムーブメント | キャリバー9F62 |
ケースサイズ | 〔ケース外径〕 37.0mm〔厚さ〕 9.95mm |
精度 | 年差±5秒 |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧防水) |
発売日 | 2010年6月10日 500本限定 |
SBGH015(メカニカルモデル)
シースルー仕様の裏ぶたから見ることができるムーブメントの回転錘には、18Kイエローゴールド製の「獅子の紋章」があしらわれています。
発売時の定価は682,500円でしたが、中古市場での販売価格は約100万円~となっています。
品番 | SBGH015 |
駆動方式 | 自動巻き(手巻付き) |
ムーブメント | キャリバー9S85 |
ケースサイズ | 〔外径〕 28.4mm 〔厚さ〕 6.0mm |
精度 | 平均日差-2秒~+4秒(静的精度) |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧防水) |
発売日 | 2010年7月9日 300本限定 |
注意点
◇値上がりを期待しない
前述したとおり、購入時の価格よりも高く売れるというのはロレックスの人気モデルやパテック・フィリップなどごく一部の時計に限られます。
グランドセイコーは残念ながら今のところ上記には当てはまりませんので、値上がり目的で購入するモデルを決めるのはやめておきましょう。
◇安易に限定モデルに手を出さない
数量限定モデルは供給が少ない分値上がりしやすい傾向にあるとお伝えしましたが、グランドセイコーは限定モデルが数多く存在するため、どのモデルが値上がりするか見極めるのか大変難しいです。
また、元々の販売価格も高いケースが多いです。
そのため、値上がりだけを理由に安易に限定モデルに手を出すのはやめておきましょう。
◇維持コストを考慮する
高級腕時計を初めて購入する人が見落としがちな点として維持費が挙げられます。
腕時計の本体価格にばかり目が行きがちですが、高級時計はクォーツ式、機械式を問わず数年に一度オーバーホールを受ける必要があります。オーバーホールは時計版の人間ドックと考えてください。
そのため、購入の際には価格だけではなく維持費がどれぐらい掛かるのかについても考えておく必要があります。
なお、買った時計を新品のまま大事に箱にしまっておいた場合でもオーバーホールは必要です。
まとめ
本記事ではグランドセイコーの資産価値を検証しました。
グランドセイコーは、ロレックスのように売却価格が購入価格を上回ることこそありませんが、リセールバリュー(中古買取価格)が比較的高いです。
また、レアケースですが一部の数量限定モデルは販売価格を上回る価格に高騰していることもわかりました。
購入の際は上記の点も考慮すると後悔のない時計選びが出来るのではないでしょうか。